カジュアル面談 準備が9割!|採用成果を分ける理由と進め方

2024年度の有効求人倍率は1.3倍を超え、多くの業界で人材獲得競争が激化しています。そんな中、従来の求人票による「待ちの採用」では限界があり、多くの企業がWantedlyをはじめとする共感型採用メディアを活用しています。その中核となるのが「カジュアル面談」です。
しかし、実際に運用してみると課題が見えてきます。特に、採用担当者が1人〜2人という中小企業では、体系立てた面談設計ができずに悩むケースが多いのです。
「結局、何を準備すればいいかわからない」
「面談で何を話せばいいのか毎回迷う」
「せっかく面談したのに、その後に繋がらない」
「面談は盛り上がったのに、選考に進んでもらえない」
「面談の質にばらつきがあり、属人化してしまっている」
株式会社Synayakaが展開する採用支援サービス「しなやかHR Lab」には、こうした声が数多く寄せられています。同社代表取締役の養田峻介氏は「カジュアル面談を『なんとなく』ではなく『意図を持って』準備できている企業が、確実に採用成果を伸ばしています」と語ります。
実際、同社が支援したあるSaaS企業(従業員50名)では、カジュアル面談の準備を抜本的に見直したところ、面談から選考への転換率が従来の12%から36%へと3倍に向上しました。また、別のスタートアップ企業では、面談の質問設計とフォロー体制を整備することで、内定承諾率が20%向上した事例もあります。
300社超の運用支援で蓄積された知見をもとに、成果に繋がるカジュアル面談の準備法を詳しく紹介します。
カジュアル面談とは?基本的な準備の考え方
カジュアル面談の本質と従来面接との違い
従来の面接とカジュアル面談は根本的に異なります。面接が「評価・選考」の場であるのに対し、カジュアル面談は企業と候補者が対等な立場で関係を築く場です。
「応募しようか迷っている」「まずは話を聞いてみたい」「転職活動は始めていないが、良い話があれば検討したい」といった、まだ踏み出せていない人との出会いの窓口として機能します。つまり、評価やジャッジではなく、お互いを知る「余白ある出会い」の時間なのです。
カジュアル面談準備の重要性
特に昨今の採用市場では、転職顕在層だけでは十分な母集団が形成できません。転職潜在層との接点をいかに作るかが採用成功の鍵となっており、その最初の接点がカジュアル面談なのです。
養田氏は「優秀な人材ほど転職市場に出てこない傾向があります。そうした人材とのファーストコンタクトとして、カジュアル面談の準備の重要性はますます高まっている」と指摘します。
カジュアル面談準備でよくある誤解
準備を行う前に、まずは誤解を解いておくことが重要です。この本質を理解せずに臨むと、一方的な会社説明に終始したり、逆に売り込みすぎて候補者を引かせてしまったりする失敗が起きやすくなります。
典型的な準備段階での誤解:
- 「面接の前段階」として位置づけ、評価項目を準備してしまう
- 会社の魅力を伝える資料だけを準備し、質問を考えない
- 候補者の話を聞く準備をせずに、話す内容だけを用意する
- 次のステップの準備が曖昧で、面談で終わってしまう設計
これらの誤解を避けるためには、カジュアル面談独自の準備手法が必要になります。
カジュアル面談の準備で押さえるべき5つのポイント
1. 面談の目的と採用ペルソナを明確化する
まず重要なのが、面談のゴール設定です。「選考移行を促すのか」「カルチャーマッチを確認するのか」「まずは会社を知ってもらうのか」「業界や職種への興味を高めるのか」。目的によって話すべき内容や質問は大きく変わります。
前述のSaaS企業では「将来リーダーになれる人材にだけ会う」と方針を決定しました。具体的には、以下のような基準を設けています:
- 現在の職場でチームを率いた経験がある
- 自ら課題を見つけて改善提案をした経験がある
- 新しい技術や手法の習得に積極的である
- 将来的にマネジメントに興味がある
この明確な基準により、質問内容から伝える情報まで一本化することができ、質の高い候補者との面談が実現し、結果的に選考転換率の大幅向上に繋がりました。
チェックすべき項目:
- 面談のゴールは何か?
- どんな人材に会いたいのか?(採用ペルソナの明確化)
- 面談後の次のステップは何か?
- 面談で判断したいポイントは何か?
- 何を持って「成功した面談」とするか?
2. 話すべき「会社の中身」を整理する
候補者が知りたいのは、事業モデルや待遇だけではありません。特にWantedlyユーザーは「共感」や「リアルさ」を重視する傾向が強いのです。
伝えるべき要素:
- どんなカルチャーなのか?
- 働く人たちの雰囲気は?
- 現在のステージでどんな挑戦があるのか?
- なぜこの事業をやっているのか?(ストーリー)
- どんな人が活躍しているのか?(具体例)
- 今後のビジョンと候補者の関わり方
制度の説明よりも、働く人の体験談や会社の価値観が伝わるエピソードを準備しておくことが重要です。
具体的な準備例: ある製造業の企業では、以下のようなストーリーを準備しています:
- 創業者がなぜこの事業を始めたのかのエピソード
- 最近成功したプロジェクトでのチームワークの話
- 社員が自主的に立ち上げた改善活動の事例
- お客様から感謝された具体的なエピソード
- 失敗から学んだ会社の成長ストーリー
これらのストーリーは、単なる情報伝達ではなく、会社の「人となり」を感じてもらうための重要な要素になります。
3. 効果的な質問リストを用意する
対話のバランスは「話す:聞く=5:5」が理想です。一方的な説明ではなく、価値観の交換ができる質問設計が必要になります。
段階別質問設計の例:
【導入段階】
- 「今日はお時間いただき、ありがとうございます。まず、弊社のことはどちらでお知りになりましたか?」
- 「どんなきっかけで今回お時間をいただけることになったのでしょうか?」
【価値観探り段階】
- 「いま、どんなことを軸に転職を考えていらっしゃいますか?」
- 「これまでの経験の中で、自分らしく働けた瞬間はありましたか?」
- 「チームや働く人にどんな価値観を求めますか?」
- 「どんな環境だと、あなたの力が発揮されやすいですか?」
【深掘り段階】
- 「今の会社で一番やりがいを感じるのはどんな時ですか?」
- 「逆に、ストレスを感じるのはどんな時でしょうか?」
- 「5年後、どんな自分になっていたいですか?」
【クロージング段階】
- 「今日お話しした中で、何か気になる点や疑問はありますか?」
- 「率直に、弊社についてどんな印象を持たれましたか?」
4. 「逆質問」への準備を怠らない
面談の後半では必ずと言っていいほど候補者からの質問時間があります。この時間でいかに候補者の志望度を高められるかが勝負になります。
よくある質問とその回答例を事前に準備し、単なる制度説明ではなく「なぜそうなっているのか」という背景やストーリーまで語れるようにしておきましょう。
よくある逆質問と回答準備例:
Q: 「御社の働きやすさはどうですか?」 A: 制度の説明だけでなく、「なぜその制度ができたのか」「実際に利用している社員の声」「会社が大切にしている価値観との関係」まで含めて回答する。
Q: 「今後の事業展開はどう考えていますか?」 A: 公開可能な範囲で具体的なビジョンを共有し、「候補者がどのような形で関わっていけるか」まで踏み込んで話す。
Q: 「どんな人が活躍していますか?」 A: 抽象的な表現ではなく、実際の社員の具体例やエピソードを交えて回答する。
5. 面談内容をナレッジ化して組織で共有する
「いい面談だった」で終わらせず、面談ログを取り、成功パターンを型化することが重要です。どんな質問が効果的だったか、候補者はどんな点に興味を示したかを記録し、次回以降の面談に活かしましょう。
これにより、担当者によるばらつきを防ぎ、再現性のある面談運用が可能になります。
面談ログの記録項目例:
- 候補者の基本情報と転職理由
- 効果的だった質問とその反応
- 候補者が最も興味を示した会社の要素
- 候補者の懸念点や不安要素
- 次回アクションと期待値
- 面談の改善点
組織として面談の質を向上させるためには、このナレッジの蓄積と共有が欠かせません。
カジュアル面談の進め方|準備した内容を活かす実践法
カジュアル面談の準備段階での時間配分設計
効果的なカジュアル面談は、事前の準備が8割を決めます。一般的に60分の面談の場合、以下のような時間配分を準備段階で設計しておくことが理想的です:
【推奨タイムスケジュール】
- アイスブレイク:5分
- 候補者の状況ヒアリング:20分
- 会社・事業説明:20分
- 質疑応答:10分
- 次のステップ確認:5分
この流れを意識することで、一方通行になりがちな面談を双方向の対話に変えることができます。
アイスブレイクの準備と実践方法
面談開始の3分間で空気を和らげることが、その後の面談の質を決めます。事前に候補者の情報を調べて、共通の出身地、趣味、最近の業界ニュースなど、「共通点」から入る準備をしておきましょう。
アイスブレイク準備のチェックリスト:
- 候補者のプロフィール情報の確認
- 共通点となりそうな話題の洗い出し
- 当日の天気や時事ネタの準備
- 自然な会話の流れのシミュレーション
効果的なアイスブレイクの例:
- 「今日はお忙しい中お時間いただき、ありがとうございます。〇〇駅からいらしたんですね。あの辺りはよく行かれるんですか?」
- 「プロフィールを拝見したら、〇〇大学のご出身なんですね。実は弊社にも〇〇大学出身の社員がいまして…」
- 「今日は暖かいですね。桜も咲き始めて、もう春ですね」
重要なのは、相手のプロフィールや当日の状況から自然な話題を見つける準備をしておくことです。
ヒアリングで価値観を探る
アイスブレイクの後は、候補者の現状や転職に対する考えを聞く時間です。ここで重要なのは、表面的な転職理由だけでなく、その人の価値観や大切にしていることを深く理解することです。
段階的なヒアリングの進め方:
ステップ1:現状の確認 「現在のお仕事について教えていただけますか?」 「どんなことを中心に担当されているんですか?」
ステップ2:やりがいと課題の探索 「今のお仕事で一番やりがいを感じるのはどんな時ですか?」 「逆に、もう少しこうだったらいいなと思うことはありますか?」
ステップ3:価値観の深掘り 「お仕事をする上で、一番大切にしていることは何ですか?」 「どんな環境だと、力を発揮しやすいと感じますか?」
ステップ4:将来への想い 「今後のキャリアについて、どんなことを考えていらっしゃいますか?」 「5年後、どんな自分になっていたいですか?」
会社説明は「ストーリー」で伝える
候補者の価値観を理解した後は、その価値観に響くポイントを中心に会社のことを伝えます。重要なのは、単なる情報伝達ではなく、「なぜその会社で働くことが候補者にとって意味があるのか」を伝えることです。
ストーリーテリングのポイント:
- 創業の想いや事業への情熱
- 実際に働く社員の体験談
- 会社が大切にしている価値観の具体例
- 今後のビジョンと候補者の関わり方
- 成功事例だけでなく、失敗から学んだ話も含める
適度な「ゆるさ」と「期待感」の両立
カジュアル面談の難しさは、リラックスした雰囲気を保ちながらも、候補者に「この会社で働いてみたい」と思わせる期待感を醸成することです。
売り込みすぎず、しかし会社の魅力はしっかりと伝える。このバランス感覚が面談の成否を分けます。
バランスを取るためのポイント:
- 会社の良い面だけでなく、課題も正直に共有する
- 「完璧な会社」ではなく「成長している会社」であることを伝える
- 候補者の関心に合わせて話の重点を調整する
- 押し付けがましくならないよう、相手のペースを尊重する
よくある失敗と対策
NG例:
- 会社説明だけで終わってしまう
- 売り込みが強すぎて候補者を引かせる
- 候補者の温度感を汲み取れない
- 面談の目的が曖昧で、何のための時間かわからない
成功のコツ:
- 面談前に目的と流れを候補者に伝える
- 相手の話にしっかりと耳を傾ける
- 「うなずき」や「共感」で関係性を築く
- 次のステップを明確にして終了する
まとめ|「らしさ」と出会う場としてのカジュアル面談
カジュアル面談は単なる情報収集の場ではありません。候補者の「その人らしさ」に触れ、会社の「らしさ」を届ける貴重な機会です。
養田氏は「『この人がこの会社に出会えてよかった』と思えるような、小さなきっかけを丁寧に設計することが重要」と強調します。
採用競争が激化する中、カジュアル面談の質向上は企業にとって急務の課題といえるでしょう。「なんとなく」の面談から脱却し、戦略的な準備を通じて採用成果の向上を目指していただきたいと思います。
【取材協力】 株式会社Synayaka 代表取締役 養田峻介氏 採用支援・RPOサービス「しなやかHR Lab」にて300社超のWantedly運用支援を手がけています。東京大学経済学部卒業、元ITエンジニア。14名規模の組織を率いる経営者として、採用ブランディングから戦略立案まで幅広く支援しています。
【サービス情報】 株式会社Synayakaでは、カジュアル面談の設計から質問テンプレートの提供、ナレッジ化支援まで含めた採用支援サービスを提供しています。Wantedly活用に課題を感じる企業向けに無料相談も実施中です。
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